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おいしいものは、食べてみないとわからない まずいものもおなじ
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思えば、屋外で人を屠ったのは、はじめてだった。
それがそもそもの間違いだったんだ。

ぼくはがらにもなく慌てて、パドマがいる宿屋に舞い戻った。
風呂がある、ありがたい宿。パドマはどうでもいいといった風だったけれど、ぼくが風呂付にこだわって選んだ。
パドマがいたので、ただ、「ただいま」とだけ言って、ぼくはできるだけ落ち着いてシャワールームに入った。
パドマがどこか物言いたげだったけど、ただ単に「ただいま」という言葉に驚いているようにも感じられた。
だって、もしかしたら、パドマは今まで、言われたことがなかったかもしれないじゃない。

着ているものを全部脱ぎ捨て、シャワーの蛇口をひねると、丁度良い温度よりも少し温いぐらいのお湯が降ってきた。
安っぽい、やたらと香りがするシャンプーで髪をがしがし洗う。
染み付いた、血の匂いを消すために。
パドマでなくても、わかってしまうんじゃないかと不安になる。


7日目



ぼくは、この島で初めて人を殺した。



若い女性で、おそらく観光客だ。連れ合いは見つからなかった。
ぼくについてくるんだから、相当遊んでるか、よっぽど頭が悪いんだろう。男受けするタイプだ。
途中から、ぼくは彼女が好きになった。
ぼくはたっぷり話し込み、最後のヒミツの言葉を投げかけて、とんと後頭部を叩く。
彼女はくず折れ、地面に出会う前にぼくが受け止める。
ここまではいつも通り。

ここからがいつも通りじゃない。
ぼくは見つからないだろうとタカをくくっていた。
俗に”遺跡外”とするのは、遺跡の入り口付近に出来たバザールの密集地帯を指し、彼女といたのは、そこからさらに離れた、ジャングルみたいな森林の中だ。
ぼくは彼女を結局地面に寝かせて、服を脱がす。
脱がしたら、うつぶせにして、首を小さく切る。血抜きだ。
持ってきたバケツに血をためる。血の始末が一番大変だ。
本来であれば、さかさまに吊り上げて血抜きをするのだけれど、ここにそんな器具はない。
血抜きが終わったら、解体する。内臓を取り出し、体をばらばらにして、持ち運びしやすいようにカットする。
(詳細は省く。いつかお披露目できるといい)
これから、ぼくは彼女と1~2ヶ月は一緒にいることになる。
2ヵ月後には、彼女はぼくになる。


はずだった。

ここは何せ隠す場所がない。
とりあえず解体したものを、匂いのある布でくるみ、さらに紙で包んで、別の宿屋(風呂なし)に数回に分けて持ち込んだ。
遺跡外だから全く怪しまれない。ぼく以上に荷物を持って行ったり来たりしているヤツなんて、バカみたいにいるんだもの。

3回目ぐらいだったか、宿屋から彼女の元に戻る時、人の声がした。

反射的に、木の影に身を隠す。
女の子と、やたら背の高い男が一人ずつ。
彼女の傍らに。

要するに、見つかってしまったのだ。


シャワーを浴びながら、ぼくは起きた事を何べんも振り返る。
この島に来たのは、警察がいないからなのに、噂によるとちゃんと派出所があって、おまわりがいるという。
本当にいるとしたら、すぐに通報されるだろう。
ああ、なんて憂鬱なんだろうか。
大体にしてここはどこの国の島なんだ。


見つかってしまったことはしょうがない。
次、どうすればいいかだ。
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