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おいしいものは、食べてみないとわからない まずいものもおなじ
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遺跡内を探索、というよりも散策するような足取りだったけれど、ぼくとパドマは、わりと他の冒険者よりも先頭にいて、ずんずん進んで行った。
三つ目の魔方陣があったので、それを覚えることにした。今度から、これを思い描くことでココに戻ってこれる。

これ、便利だけど、どういう仕組みなんだろう。
ぼくはなんでもかんでも「どうしてだろう」と考えるけど、それ以上考えることはあんまりない。そもそも知識も少ないので、魔方陣を調べてみようとも、仕組みの仮説をたてることもしなかった。
シリウスという響きも、何かが浮かぶと言う表現も、ぼくにはあまり感じ入るところがなかったからとも言える。

その魔方陣のそばを通る河をパドマは気に入ったみたいで、ずっとその河のせせらぎと、きらきら光る水面と、たぶんそこらじゅうのぼくにはわからない匂いを嗅いでいた。
ぼくはというと、パドマが遊んでくれないので、二人で楽しんでいたアップルティーが空になった時点でうとうとしてしまい、パドマに起こされるまでずっと眠り込んでいた。
ぼくは、カフェインという物質の存在を未だに信じていない。


どうやら毎日、一度は遺跡の生き物にケンカをふっかけられるみたいで、子供みたいな悪魔みたいなやつと、レンガの壁に手足が生えたようなやつをやっつけてやった。
悪魔みたいなやつは小さくて、子供みたいで気がひけてしまった。
レンガみたいなやつは、どこにもノドみたいな器官がないのに、せわしなく喋ったりした。
たしか、ただの壁じゃないよ、とか、信じて、とか、そういうの。
ぼくもパドマではないけど、百歩譲って鉱物の生命体が居ても、言葉を発するのは納得いかなくて、パドマが解体してる横で、ぼくもいじくって調べてやろうかと考えたりした。

だって、肺も喉も気管も横隔膜もないだろうに、声が出るなんてどういう仕組みなんだ。
ぼくは仕事上、そういうのに関しては知識も興味もあったので、魔方陣なんかよりは、こいつの仕組みのほうが気になってしまう。
たとえば体じゅうの岩が震えて、声のようなものを出してるとか、そういうことなのか?
じゃあ、どうやって岩が震えるんだ?

けれども、ぼくの包丁は、やわらかくてやさしい、あたたかい肉を切るためのもので、こんなかたいものを切るためのものじゃなかった。
だいいち、ぼくはこのレンガを殺したら、『食べなくてはいけない』。

うん、そもそも、こいつに死はあるのか。どうしたら死ぬのか。
どうしたら死と言えるのか。
(最後の質問は、どんな生き物にも言えることだ。全く、この世ときたら)

なんてことを考えてたら、パドマの解体が終わってしまった。
パドマは何も言わなかったので、何かわかった?なんて無粋な質問を投げかけるようなことはしなかった。

魔方陣を覚えたし、遺跡外に戻ることにした。
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