おいしいものは、食べてみないとわからない まずいものもおなじ
(チキレに敗北しました。本編未収録)
ぼくが肉屋をはじめた理由は大きく分けてふたつ。
ひとつは、ぼくのライフワークを取り戻すためだ。
ぼくの日々には、肉を触らない日はなかった。
もちろん、ぼくの本業は肉屋なので、その「肉」というのは、人間の肉のことを差すわけじゃない。大きい意味での、肉だ。
はっきりいって、ぼくの仕事は技術職だ。
毎日でも肉に触れていないと、どんな人間だってへたくそになる。
カンが鈍るという意味でもそうだけれど、実際のところ「使う筋肉が衰えてしまう」というのが真実。
ぼくは、あらゆる生き物を締め、解体することができると思っているけれど、
それは毎日生き物に触れ、慈しみ、愛し、屠っているからであって、たまの祭日に、
一体だけめいいっぱい大事に殺すのとはワケが違う。
なによりも、命の重みとそのあっけなさは、毎日触れていないと忘れてしまう。
それは、とても恐ろしいことだ。
ふたつめは、ぼくのかけがえのない隠し場所として。
隠すものは、お察しのとおり、締め終えた彼女だ。
解体したとはいえ、彼女一人を持ち歩くのは困難だし、何より「肉屋」がないために、
おまわりに死体を見つけられてしまった。
死体――ああ、なんてくそったれな言葉なんだろう!けれどももうそういうふうに表現するしかない。
あの、ビニールシートの中にある彼女の一部は、もう「死体」になってしまった。
彼女を「死体」にしたのは間違いなくおまわりだ。
彼女が見つかることがなければ、まだどこかで生きていると、彼女の家族は思い込んでいただろうに。
彼女が死んだことすら気づかないはずだったんだ。
女性を捕まえて屠り、解体し、おいしく頂いたとしても、誰もぼくがやったとは気づかない――「死体」が見つからない限り!
でも、もう問題はない。これからも、これまでどおり。
ぼくは生き物を屠り、肉とし、食らう。いつまでも。
ぼくが肉屋をはじめた理由は大きく分けてふたつ。
ひとつは、ぼくのライフワークを取り戻すためだ。
ぼくの日々には、肉を触らない日はなかった。
もちろん、ぼくの本業は肉屋なので、その「肉」というのは、人間の肉のことを差すわけじゃない。大きい意味での、肉だ。
はっきりいって、ぼくの仕事は技術職だ。
毎日でも肉に触れていないと、どんな人間だってへたくそになる。
カンが鈍るという意味でもそうだけれど、実際のところ「使う筋肉が衰えてしまう」というのが真実。
ぼくは、あらゆる生き物を締め、解体することができると思っているけれど、
それは毎日生き物に触れ、慈しみ、愛し、屠っているからであって、たまの祭日に、
一体だけめいいっぱい大事に殺すのとはワケが違う。
なによりも、命の重みとそのあっけなさは、毎日触れていないと忘れてしまう。
それは、とても恐ろしいことだ。
ふたつめは、ぼくのかけがえのない隠し場所として。
隠すものは、お察しのとおり、締め終えた彼女だ。
解体したとはいえ、彼女一人を持ち歩くのは困難だし、何より「肉屋」がないために、
おまわりに死体を見つけられてしまった。
死体――ああ、なんてくそったれな言葉なんだろう!けれどももうそういうふうに表現するしかない。
あの、ビニールシートの中にある彼女の一部は、もう「死体」になってしまった。
彼女を「死体」にしたのは間違いなくおまわりだ。
彼女が見つかることがなければ、まだどこかで生きていると、彼女の家族は思い込んでいただろうに。
彼女が死んだことすら気づかないはずだったんだ。
女性を捕まえて屠り、解体し、おいしく頂いたとしても、誰もぼくがやったとは気づかない――「死体」が見つからない限り!
でも、もう問題はない。これからも、これまでどおり。
ぼくは生き物を屠り、肉とし、食らう。いつまでも。
PR
この記事にコメントする