おいしいものは、食べてみないとわからない まずいものもおなじ
この島に日本人は何人居るのだろう。
ぼくが知っているのは、ぼくと、タカシくんだけだ。
タカシくんは、他にも日本人がいると言っていたけれど、ぼくはまだタカシくん以外の日本人には会ったことがない。
それっぽい姿をした男女を見かけたことはあるけど、見かけたというだけで、実際に確かめてはいない。
だから、ぼくの意識の中では、日本人はタカシくんだけだ。
ぼくが知っているのは、ぼくと、タカシくんだけだ。
タカシくんは、他にも日本人がいると言っていたけれど、ぼくはまだタカシくん以外の日本人には会ったことがない。
それっぽい姿をした男女を見かけたことはあるけど、見かけたというだけで、実際に確かめてはいない。
だから、ぼくの意識の中では、日本人はタカシくんだけだ。
タカシくんは、大学生だ。
タカシくんの話によると、タカシくんの知り合いの人、すなわち日本人が既に島に来ているという。
名前は小津、先生。教授、だったかな?とにかくそういう人だ。
その人を探しているけど、見つからないんだという。
ぼくの店に人探しの貼り紙を貼ってみたけど、実は遺跡内のバザールにはそこらじゅうに似たような紙が貼ってある。
例の3ヶ月前の島崩壊の事件と、最近のものがごっちゃになっているせいで、もうそれで人が探せるとは思えなかった。
たまに、それらの紙がはがれ、飛んでいくのを見る。
どちらかといえば、人探しというより懸賞首探しのようになってしまっている。
タカシくんは、その先生に言われて大学の補修としてこの島までやってきたというのだけど、
ぼくは中学までしか行っていないので、大学の授業内容や担当する先生の気紛れ具合などは、
漫画の中のイメージだけでしかなくて、それがすごいことなのか、普通なのか、ひどいことなのか、よくわからない。
そういえば、タカシくんの年齢を聞いていないし、言っていない。
たぶん同い年ぐらいかなと思っていたけれど、大学生であることが判明したので、おそらく年上だろう。
タカシさんと改めるべきなのかなと思うけど、ぼくは「タカシくん」と言う呼び方が気に入っているので、聞かれない限り年齢はいわないでおきたいと思う。
でも、タカシくんはぼくの年齢を知っても、タカシくんと呼ばせてくれそうな気がする。
そして、ぼくのことも、変わらずに「アキくん」と呼んでくれると思う。
タカシくんは基本的に、というよりも根っからの良い人だ。
一緒にいると、心が洗われるみたいでほっとする。
タカシくんが、どれだけ良い人かというと、少し付き合っただけでも、
その良い人ぶりがすごくよくわかるぐらい良い人。
これでネコ被っているのだったら、ぼくは二度と人間を信用できなくなるだろう。
ぼくと包丁の孤独な戦いも終わり、代わりに銃や爆弾なんかを持ち出すんじゃないかと思う。
だから、ぼくはタカシくんをあまり信用しすぎないように気をつけるつもりなんだ。
信用、という言葉はどこか間違っていると思うけど…良い言葉が出てこない。
例えば、ぼくの大事なものを教えるとか、あげるとか、教えてもらうとか、もらうとか。秘密を共有するとか。
そういうことは避けたい。気軽な友達でいたい。
それらを共有し、親友というものになっても、もし裏切られたら、
ぼくはたぶん…、ああ、また同じことを繰り返した。
とにかく、普通じゃいられないってことだ。
人の心は、どんなに体を細部まで解体したって、影も形もない。
中身を計り知ることはできない。
真実には到達しない。
でも、例えばタカシくんが、何かに迷ったり、困ったりしたら、ぼくはなるべく協力したい。共有したいと、助けたいと思う。
ぼくがタカシくんを裏切ることはないと、ぼくがわかっているからだ。
ぼくは、ぼくを解体するまでもなく、自分の心の真実を一番分っている。
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