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おいしいものは、食べてみないとわからない まずいものもおなじ
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遺跡外の忙しさは、肉屋で修羅場になっているときと感覚が似ている。
思考がどこかに吹っ飛んでしまうのに、体はきちんと動いている。
いや、「動いていた」という記憶だけが残る。
脳の、奥深くが働かない感じだ。
すごくシンプルで、ぼくはひとつの細胞になったみたいだった。


今、すべてが終わって、あとは品々を待つばかりなのだけれども、
どこか、落ち着かない。
ぼくは細胞じゃなくなってしまった。
いろんな細胞で構成されているけれど、崩れかけている、ぼくだ。

ぼくは生まれてからずっと、暇さえあれば眠ってしまうか、
何かためにならないことをずっと考えてて、死ぬときは、
寝ているときか、何かためにならないことを
考えてるときなんじゃないのかと思っているのだけれど、
どうにも落ち着かないのは、考えがぐるぐるしていて、ぐるぐるしているせいで
眠れもしないからだ。
ぼくの、決してよくはない頭の中、頭蓋骨に守られた
右脳、左脳のどこにどうやって意識と考えと記憶があるのか、全く理解できないが、
とにかく、考えがごちゃごちゃとしていて、眼球のうしろあたりでがちゃがちゃと何かが鳴いているのしかわからない。

二人部屋。風呂付のいつもの宿。隣のベッドにパドマはいない。
遺跡外をうろうろしているんだろう。
そもそも、ベッドで横になったのを見たことがない。
ぼくはパドマが眠る前に眠るし、パドマが起きてから起きるし、大体はパドマに起こしてもらう。
ぼくは風呂に入るのもおっくうになって、少し上とズボンを脱いで
そのまま布団にもぐりこむ。腹を抱えるように、背中をまるめて横になる。
目は疲れているけれど、やっぱり、眠れない。

ぼくの頭の平穏をゆるがす考えはなんだ。


わかっている。


パドマにぼくが持つ、世界のしくみを話した。
わかってもらえなくていい。
わからなくたって、世界はそうなっているんだから、いい。

けれど、

ぼくは、パドマに迷惑をかけ、おまけに巻き込んだ。
パドマは最初に言った、「何か面倒がおきたら」
「私は直ちに君の元を去る」と。
いまだって、ずっと、ぼくの耳の奥に反響し続けて、衰える様子がない。
呪いというのがあれば、これのことなんだろうか。

ぼくは、パドマに聞いたんだ。
このチームは解散なのかって。

明確な返事はなかったけれど、「足止めを食うのは御免だ」その言葉に遮られた。
そうだ、とも言われなかったから、たぶん、許してもらえているのか。

パドマは、この宿に帰ってこないかもしれない。
明日、目が覚めても、パドマはいないかもしれない。
ぼくのことを、パドマは起こしてはくれない。
ぼくは、起こしてくれるまで、起きないかもしれない。
そこにパドマがいないということを認めたくはないから。






ああ、そうか、
これは、考え、ではななくて、
不安、なんだ。
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