おいしいものは、食べてみないとわからない まずいものもおなじ
草花が柔らかい金属でできていて、その野原を女の子が慎重に(割らずに)歩いたら、たぶんこういう音がするんだろうと思った。
髪の毛がさらさらと音を立てているところを久しぶりに聞いた気がする。
その女性はぼくに、おそらく世間では役に立たないであろうその物質を、譲ってくれた。
ぼくの手のひらに、授けるように渡してくれたそれは、誰から渡されても、毎回なんと言っていいかわからない形をしている。
この物体を無理やり分類するなら、死、だろう。モノとしての最後だ。
これ以上はどうともならない。
けれど、これは、最初からこの形ではなかったはずだ。
これは、彼女のところに集まったものたちが、くっつき、融合したものだ。
彼女のところに来る前は何をしていたのだろう。
誰の手によってこの島にたどり着いたのか、どうしてこの島で芽吹いたのか。
けれども、それらは、みんな、死んでしまった。
ぼくの手のひらにある、その何かたくさんのめぐり合わせの死体には、彼女の体温が少しだけ残っていた。
――こんなものが、役に立つのか。いや、あなたにとって価値があるのならそれが全てだけれど――
そう、
この物体は、ぼくにとって、とても大事なものだ。
こんな形の物体が、職人の手を経て、死体から生まれ変わる。
すべては回っていく。
これは、じきに、さまざまな人の手を経て、ぼくのものになる。
ぼくの、手になる。ぼくになるんだ。
ひとつの輪っかだ。
一巡していく彼女を持って、ぼくは輪廻を紡ぐ。
髪の毛がさらさらと音を立てているところを久しぶりに聞いた気がする。
その女性はぼくに、おそらく世間では役に立たないであろうその物質を、譲ってくれた。
ぼくの手のひらに、授けるように渡してくれたそれは、誰から渡されても、毎回なんと言っていいかわからない形をしている。
この物体を無理やり分類するなら、死、だろう。モノとしての最後だ。
これ以上はどうともならない。
けれど、これは、最初からこの形ではなかったはずだ。
これは、彼女のところに集まったものたちが、くっつき、融合したものだ。
彼女のところに来る前は何をしていたのだろう。
誰の手によってこの島にたどり着いたのか、どうしてこの島で芽吹いたのか。
けれども、それらは、みんな、死んでしまった。
ぼくの手のひらにある、その何かたくさんのめぐり合わせの死体には、彼女の体温が少しだけ残っていた。
――こんなものが、役に立つのか。いや、あなたにとって価値があるのならそれが全てだけれど――
そう、
この物体は、ぼくにとって、とても大事なものだ。
こんな形の物体が、職人の手を経て、死体から生まれ変わる。
すべては回っていく。
これは、じきに、さまざまな人の手を経て、ぼくのものになる。
ぼくの、手になる。ぼくになるんだ。
ひとつの輪っかだ。
一巡していく彼女を持って、ぼくは輪廻を紡ぐ。
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