おいしいものは、食べてみないとわからない まずいものもおなじ
思えば、屋外で人を屠ったのは、はじめてだった。
それがそもそもの間違いだったんだ。
ぼくはがらにもなく慌てて、パドマがいる宿屋に舞い戻った。
風呂がある、ありがたい宿。パドマはどうでもいいといった風だったけれど、ぼくが風呂付にこだわって選んだ。
パドマがいたので、ただ、「ただいま」とだけ言って、ぼくはできるだけ落ち着いてシャワールームに入った。
パドマがどこか物言いたげだったけど、ただ単に「ただいま」という言葉に驚いているようにも感じられた。
だって、もしかしたら、パドマは今まで、言われたことがなかったかもしれないじゃない。
着ているものを全部脱ぎ捨て、シャワーの蛇口をひねると、丁度良い温度よりも少し温いぐらいのお湯が降ってきた。
安っぽい、やたらと香りがするシャンプーで髪をがしがし洗う。
染み付いた、血の匂いを消すために。
パドマでなくても、わかってしまうんじゃないかと不安になる。

ぼくは、この島で初めて人を殺した。
若い女性で、おそらく観光客だ。連れ合いは見つからなかった。
ぼくについてくるんだから、相当遊んでるか、よっぽど頭が悪いんだろう。男受けするタイプだ。
途中から、ぼくは彼女が好きになった。
ぼくはたっぷり話し込み、最後のヒミツの言葉を投げかけて、とんと後頭部を叩く。
彼女はくず折れ、地面に出会う前にぼくが受け止める。
ここまではいつも通り。
ここからがいつも通りじゃない。
ぼくは見つからないだろうとタカをくくっていた。
俗に”遺跡外”とするのは、遺跡の入り口付近に出来たバザールの密集地帯を指し、彼女といたのは、そこからさらに離れた、ジャングルみたいな森林の中だ。
ぼくは彼女を結局地面に寝かせて、服を脱がす。
脱がしたら、うつぶせにして、首を小さく切る。血抜きだ。
持ってきたバケツに血をためる。血の始末が一番大変だ。
本来であれば、さかさまに吊り上げて血抜きをするのだけれど、ここにそんな器具はない。
血抜きが終わったら、解体する。内臓を取り出し、体をばらばらにして、持ち運びしやすいようにカットする。
(詳細は省く。いつかお披露目できるといい)
これから、ぼくは彼女と1~2ヶ月は一緒にいることになる。
2ヵ月後には、彼女はぼくになる。
はずだった。
ここは何せ隠す場所がない。
とりあえず解体したものを、匂いのある布でくるみ、さらに紙で包んで、別の宿屋(風呂なし)に数回に分けて持ち込んだ。
遺跡外だから全く怪しまれない。ぼく以上に荷物を持って行ったり来たりしているヤツなんて、バカみたいにいるんだもの。
3回目ぐらいだったか、宿屋から彼女の元に戻る時、人の声がした。
反射的に、木の影に身を隠す。
女の子と、やたら背の高い男が一人ずつ。
彼女の傍らに。
要するに、見つかってしまったのだ。
シャワーを浴びながら、ぼくは起きた事を何べんも振り返る。
この島に来たのは、警察がいないからなのに、噂によるとちゃんと派出所があって、おまわりがいるという。
本当にいるとしたら、すぐに通報されるだろう。
ああ、なんて憂鬱なんだろうか。
大体にしてここはどこの国の島なんだ。
見つかってしまったことはしょうがない。
次、どうすればいいかだ。
それがそもそもの間違いだったんだ。
ぼくはがらにもなく慌てて、パドマがいる宿屋に舞い戻った。
風呂がある、ありがたい宿。パドマはどうでもいいといった風だったけれど、ぼくが風呂付にこだわって選んだ。
パドマがいたので、ただ、「ただいま」とだけ言って、ぼくはできるだけ落ち着いてシャワールームに入った。
パドマがどこか物言いたげだったけど、ただ単に「ただいま」という言葉に驚いているようにも感じられた。
だって、もしかしたら、パドマは今まで、言われたことがなかったかもしれないじゃない。
着ているものを全部脱ぎ捨て、シャワーの蛇口をひねると、丁度良い温度よりも少し温いぐらいのお湯が降ってきた。
安っぽい、やたらと香りがするシャンプーで髪をがしがし洗う。
染み付いた、血の匂いを消すために。
パドマでなくても、わかってしまうんじゃないかと不安になる。
ぼくは、この島で初めて人を殺した。
若い女性で、おそらく観光客だ。連れ合いは見つからなかった。
ぼくについてくるんだから、相当遊んでるか、よっぽど頭が悪いんだろう。男受けするタイプだ。
途中から、ぼくは彼女が好きになった。
ぼくはたっぷり話し込み、最後のヒミツの言葉を投げかけて、とんと後頭部を叩く。
彼女はくず折れ、地面に出会う前にぼくが受け止める。
ここまではいつも通り。
ここからがいつも通りじゃない。
ぼくは見つからないだろうとタカをくくっていた。
俗に”遺跡外”とするのは、遺跡の入り口付近に出来たバザールの密集地帯を指し、彼女といたのは、そこからさらに離れた、ジャングルみたいな森林の中だ。
ぼくは彼女を結局地面に寝かせて、服を脱がす。
脱がしたら、うつぶせにして、首を小さく切る。血抜きだ。
持ってきたバケツに血をためる。血の始末が一番大変だ。
本来であれば、さかさまに吊り上げて血抜きをするのだけれど、ここにそんな器具はない。
血抜きが終わったら、解体する。内臓を取り出し、体をばらばらにして、持ち運びしやすいようにカットする。
(詳細は省く。いつかお披露目できるといい)
これから、ぼくは彼女と1~2ヶ月は一緒にいることになる。
2ヵ月後には、彼女はぼくになる。
はずだった。
ここは何せ隠す場所がない。
とりあえず解体したものを、匂いのある布でくるみ、さらに紙で包んで、別の宿屋(風呂なし)に数回に分けて持ち込んだ。
遺跡外だから全く怪しまれない。ぼく以上に荷物を持って行ったり来たりしているヤツなんて、バカみたいにいるんだもの。
3回目ぐらいだったか、宿屋から彼女の元に戻る時、人の声がした。
反射的に、木の影に身を隠す。
女の子と、やたら背の高い男が一人ずつ。
彼女の傍らに。
要するに、見つかってしまったのだ。
シャワーを浴びながら、ぼくは起きた事を何べんも振り返る。
この島に来たのは、警察がいないからなのに、噂によるとちゃんと派出所があって、おまわりがいるという。
本当にいるとしたら、すぐに通報されるだろう。
ああ、なんて憂鬱なんだろうか。
大体にしてここはどこの国の島なんだ。
見つかってしまったことはしょうがない。
次、どうすればいいかだ。
遺跡内を探索、というよりも散策するような足取りだったけれど、ぼくとパドマは、わりと他の冒険者よりも先頭にいて、ずんずん進んで行った。
三つ目の魔方陣があったので、それを覚えることにした。今度から、これを思い描くことでココに戻ってこれる。
これ、便利だけど、どういう仕組みなんだろう。
ぼくはなんでもかんでも「どうしてだろう」と考えるけど、それ以上考えることはあんまりない。そもそも知識も少ないので、魔方陣を調べてみようとも、仕組みの仮説をたてることもしなかった。
シリウスという響きも、何かが浮かぶと言う表現も、ぼくにはあまり感じ入るところがなかったからとも言える。
その魔方陣のそばを通る河をパドマは気に入ったみたいで、ずっとその河のせせらぎと、きらきら光る水面と、たぶんそこらじゅうのぼくにはわからない匂いを嗅いでいた。
ぼくはというと、パドマが遊んでくれないので、二人で楽しんでいたアップルティーが空になった時点でうとうとしてしまい、パドマに起こされるまでずっと眠り込んでいた。
ぼくは、カフェインという物質の存在を未だに信じていない。
どうやら毎日、一度は遺跡の生き物にケンカをふっかけられるみたいで、子供みたいな悪魔みたいなやつと、レンガの壁に手足が生えたようなやつをやっつけてやった。
悪魔みたいなやつは小さくて、子供みたいで気がひけてしまった。
レンガみたいなやつは、どこにもノドみたいな器官がないのに、せわしなく喋ったりした。
たしか、ただの壁じゃないよ、とか、信じて、とか、そういうの。
ぼくもパドマではないけど、百歩譲って鉱物の生命体が居ても、言葉を発するのは納得いかなくて、パドマが解体してる横で、ぼくもいじくって調べてやろうかと考えたりした。
だって、肺も喉も気管も横隔膜もないだろうに、声が出るなんてどういう仕組みなんだ。
ぼくは仕事上、そういうのに関しては知識も興味もあったので、魔方陣なんかよりは、こいつの仕組みのほうが気になってしまう。
たとえば体じゅうの岩が震えて、声のようなものを出してるとか、そういうことなのか?
じゃあ、どうやって岩が震えるんだ?
けれども、ぼくの包丁は、やわらかくてやさしい、あたたかい肉を切るためのもので、こんなかたいものを切るためのものじゃなかった。
だいいち、ぼくはこのレンガを殺したら、『食べなくてはいけない』。
うん、そもそも、こいつに死はあるのか。どうしたら死ぬのか。
どうしたら死と言えるのか。
(最後の質問は、どんな生き物にも言えることだ。全く、この世ときたら)
なんてことを考えてたら、パドマの解体が終わってしまった。
パドマは何も言わなかったので、何かわかった?なんて無粋な質問を投げかけるようなことはしなかった。
魔方陣を覚えたし、遺跡外に戻ることにした。
三つ目の魔方陣があったので、それを覚えることにした。今度から、これを思い描くことでココに戻ってこれる。
これ、便利だけど、どういう仕組みなんだろう。
ぼくはなんでもかんでも「どうしてだろう」と考えるけど、それ以上考えることはあんまりない。そもそも知識も少ないので、魔方陣を調べてみようとも、仕組みの仮説をたてることもしなかった。
シリウスという響きも、何かが浮かぶと言う表現も、ぼくにはあまり感じ入るところがなかったからとも言える。
その魔方陣のそばを通る河をパドマは気に入ったみたいで、ずっとその河のせせらぎと、きらきら光る水面と、たぶんそこらじゅうのぼくにはわからない匂いを嗅いでいた。
ぼくはというと、パドマが遊んでくれないので、二人で楽しんでいたアップルティーが空になった時点でうとうとしてしまい、パドマに起こされるまでずっと眠り込んでいた。
ぼくは、カフェインという物質の存在を未だに信じていない。
どうやら毎日、一度は遺跡の生き物にケンカをふっかけられるみたいで、子供みたいな悪魔みたいなやつと、レンガの壁に手足が生えたようなやつをやっつけてやった。
悪魔みたいなやつは小さくて、子供みたいで気がひけてしまった。
レンガみたいなやつは、どこにもノドみたいな器官がないのに、せわしなく喋ったりした。
たしか、ただの壁じゃないよ、とか、信じて、とか、そういうの。
ぼくもパドマではないけど、百歩譲って鉱物の生命体が居ても、言葉を発するのは納得いかなくて、パドマが解体してる横で、ぼくもいじくって調べてやろうかと考えたりした。
だって、肺も喉も気管も横隔膜もないだろうに、声が出るなんてどういう仕組みなんだ。
ぼくは仕事上、そういうのに関しては知識も興味もあったので、魔方陣なんかよりは、こいつの仕組みのほうが気になってしまう。
たとえば体じゅうの岩が震えて、声のようなものを出してるとか、そういうことなのか?
じゃあ、どうやって岩が震えるんだ?
けれども、ぼくの包丁は、やわらかくてやさしい、あたたかい肉を切るためのもので、こんなかたいものを切るためのものじゃなかった。
だいいち、ぼくはこのレンガを殺したら、『食べなくてはいけない』。
うん、そもそも、こいつに死はあるのか。どうしたら死ぬのか。
どうしたら死と言えるのか。
(最後の質問は、どんな生き物にも言えることだ。全く、この世ときたら)
なんてことを考えてたら、パドマの解体が終わってしまった。
パドマは何も言わなかったので、何かわかった?なんて無粋な質問を投げかけるようなことはしなかった。
魔方陣を覚えたし、遺跡外に戻ることにした。
パドマは「香り」を食べるというが、それはウソだ。
パドマは「知識」も食べる。
パドマに言っても、ぱっきりと否定するか、否定もされないかのどっちかだろうから、ぼくは言ったりしない。
ぼくはこう見えて大人なんだ、そのへんは。
ついこの間、遺跡内にうようよしているという、RPG(ぼくはそのタイトルの例えすら思い出せないぐらいゲームに疎い)に出てくるような動物たちが、モサァーと襲ってきたわけで(モッサアーだったような、サァーだったような)、ぼくらはRPGの方式?にのっとって、彼らを倒した。
ここまではよかったんだけど(本当に?)、3人のま緑人間のうち一匹を(本当によかったのか?)パドマが捕まえて(それでいいのか?)、腰に下げていた大きいナ(お前はそれでいいのか?)イフで、それを解体しはじめた(納得したのか?本当に)んだ。
ぼくはおどろいて、足がすくんでしまった。
だって、パドマは、『食べない』じゃないか。
パドマのマントのすそを、ぼくはおそるおそる引っ張った。
パドマが唯一身にまとっている布であって、ぼくにとっては、それは”とりつく島”だ。
よりかかったりすると、パドマが発する香りとは別の、持ち主と一緒に旅をした先で吸い込んだであろう香りが沢山して、眠って夢を見ているのか、旅先の思い出を聞かされているのか、たまにわからなくなる。
(残念ながら、パドマの口から一回だって旅先の話を聞いたことはない。口だってめったに開きやしないんだから)
夜、自分の毛布に包まって寝るときも、自分の毛布もおんなじようにならないかなあって思って、なるべくパドマの傍で寝てるのに、今のところそんな傾向はない。二晩で匂いなんてそうそううつるもんじゃないのは、わかってるけど。わかってるんだけど。
脱線した。
とにかくこないだ、ぼくはま緑人間を解体するパドマに、衝撃を受けた。怖かったとも言っていい。
でも、やっぱりぼくは、それ以上に、「なんで」そんなことをする必要があるのか、パドマに聞きたかった。
だから、ぼくは、パドマの一張羅をひっぱったんだ。
振り向いたパドマ、目はいつもと何もかわらなくて、切れ長で一重の目と、えんぴつで描いたような眉毛が、ぴくりともしないんだ。
体に飼っている青が、いつになくキレイにみえたりした。
そして、たぶん、ぼくもいつもとおなじだった。ひとに文句を言えるほど、表情は豊かじゃない。
ぼくは聞いた、「どうして殺す必要があるか」って。
もらった答えは、「知識とするため」だった。
ぼくはいよいよ、ぼくの背をどろりと通る脊髄が、一瞬だけ、ぶるんと脈打つのを感じた。
ぼくの素直な気持ちは、「食べないなら殺さないで欲しい」だったし、それをお願いしようと思った。
でも、パドマは、「知識」を食べているところだったんだ!
殺したいから殺したんでなく、パドマは、それによって「知識」を自分のものとして、自分にとりこむために、ま緑の人間を屠った。
さっきまでの言葉は、飲み込んだ。言ったってぼくの首がきゅうと絞まるだけだ。
ぼくが、「知識にするわけでもないのに、殺して食べるのはやめろ」と言われたって、やめる道理がないんだから。
ぼくは結局パドマのマントを軽くつかんだまま、事が済むまで、二人を見守るしかなかった。
ぼくがやる「食べるための解体」と、パドマがやる「知識のための解体」では、全くやり方がちがくて、なんだか勉強になってしまった。パドマが食べる知識をつまみ食いできた気分になって、悪くなかった。
この島にいると、「生き物」の定義が揺らぎに揺らぐ。
鉱物の化け物だって、パドマは表情一つ変えずにバラして、知識として食べてしまうんだろうか?
パドマは「知識」も食べる。
パドマに言っても、ぱっきりと否定するか、否定もされないかのどっちかだろうから、ぼくは言ったりしない。
ぼくはこう見えて大人なんだ、そのへんは。
ついこの間、遺跡内にうようよしているという、RPG(ぼくはそのタイトルの例えすら思い出せないぐらいゲームに疎い)に出てくるような動物たちが、モサァーと襲ってきたわけで(モッサアーだったような、サァーだったような)、ぼくらはRPGの方式?にのっとって、彼らを倒した。
ここまではよかったんだけど(本当に?)、3人のま緑人間のうち一匹を(本当によかったのか?)パドマが捕まえて(それでいいのか?)、腰に下げていた大きいナ(お前はそれでいいのか?)イフで、それを解体しはじめた(納得したのか?本当に)んだ。
ぼくはおどろいて、足がすくんでしまった。
だって、パドマは、『食べない』じゃないか。
パドマのマントのすそを、ぼくはおそるおそる引っ張った。
パドマが唯一身にまとっている布であって、ぼくにとっては、それは”とりつく島”だ。
よりかかったりすると、パドマが発する香りとは別の、持ち主と一緒に旅をした先で吸い込んだであろう香りが沢山して、眠って夢を見ているのか、旅先の思い出を聞かされているのか、たまにわからなくなる。
(残念ながら、パドマの口から一回だって旅先の話を聞いたことはない。口だってめったに開きやしないんだから)
夜、自分の毛布に包まって寝るときも、自分の毛布もおんなじようにならないかなあって思って、なるべくパドマの傍で寝てるのに、今のところそんな傾向はない。二晩で匂いなんてそうそううつるもんじゃないのは、わかってるけど。わかってるんだけど。
脱線した。
とにかくこないだ、ぼくはま緑人間を解体するパドマに、衝撃を受けた。怖かったとも言っていい。
でも、やっぱりぼくは、それ以上に、「なんで」そんなことをする必要があるのか、パドマに聞きたかった。
だから、ぼくは、パドマの一張羅をひっぱったんだ。
振り向いたパドマ、目はいつもと何もかわらなくて、切れ長で一重の目と、えんぴつで描いたような眉毛が、ぴくりともしないんだ。
体に飼っている青が、いつになくキレイにみえたりした。
そして、たぶん、ぼくもいつもとおなじだった。ひとに文句を言えるほど、表情は豊かじゃない。
ぼくは聞いた、「どうして殺す必要があるか」って。
もらった答えは、「知識とするため」だった。
ぼくはいよいよ、ぼくの背をどろりと通る脊髄が、一瞬だけ、ぶるんと脈打つのを感じた。
ぼくの素直な気持ちは、「食べないなら殺さないで欲しい」だったし、それをお願いしようと思った。
でも、パドマは、「知識」を食べているところだったんだ!
殺したいから殺したんでなく、パドマは、それによって「知識」を自分のものとして、自分にとりこむために、ま緑の人間を屠った。
さっきまでの言葉は、飲み込んだ。言ったってぼくの首がきゅうと絞まるだけだ。
ぼくが、「知識にするわけでもないのに、殺して食べるのはやめろ」と言われたって、やめる道理がないんだから。
ぼくは結局パドマのマントを軽くつかんだまま、事が済むまで、二人を見守るしかなかった。
ぼくがやる「食べるための解体」と、パドマがやる「知識のための解体」では、全くやり方がちがくて、なんだか勉強になってしまった。パドマが食べる知識をつまみ食いできた気分になって、悪くなかった。
この島にいると、「生き物」の定義が揺らぎに揺らぐ。
鉱物の化け物だって、パドマは表情一つ変えずにバラして、知識として食べてしまうんだろうか?